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平成27年度税制改正 受取配当等の益金不算入の改正政令① ~継続保有期間と実務スケジュールに注意

 
こんにちわ、tomです。
 
最近、税制改正の話題が多いですが、季節ものということでご容赦くださいね。
前回は、実効税率についてでした。

tom-notebook.hatenablog.com

 

今回は受取配当等の益金不算入の改正論点、うち「政令で明確にされた点」のうち、受取配当等の益金不算入制度の改正ポイントをご紹介。
  • 受取配当等の益金不算入の株式区分が変わる
  • 持株割合判定の継続保有期間の起算日が変わる
  • 具体的に継続保有期間はどう考えればいいのか?
  • TOBによる買い増し等の際は実務スケジュールに注意
(以下、法令上の正確な表現ではなく、かみ砕いて記載しておりますので、実務にあたっては条文本文をご確認ください。改正政令は官報HPでみれます。受取配当等の益金不算入は、リンク先の3/31特別号外P.233の下段にあります。)
 

受取配当等の益金不算入の株式区分が変わる

持株割合が下記のとおり改正されます。左が改正前、右側が改正後。
 
改正前区分        益金不算入割合 改正後区分 益金不算入割合
関係法人株式等(☆) 100%(負債利子控除後) 関連法人株式等(★) 100%(負債利子控除後)
その他の株式等 50%(負債利子控除後) その他の株式等 50%(負債利子控除なし)
    非支配目的株式等 20%(負債利子控除なし)
 
 

持株割合判定の継続保有期間の起算日が変わる

3/31に公布された改正法人税施行令では、この持株割合の判定における継続保有期間は、下記のとおりとなりました。(上表☆★の部分)
  • (☆)改正前は、関係法人株式等の場合、配当の「効力発生日」以前6か月前より「25%以上」を継続保有
  • (★)改正後は、関連法人株式等の場合、配当の「基準日」以前6か月前より「1/3超」を継続保有
1/3未満→1/3超へ買い増しを検討している場合には、買い増しのタイミングに留意する必要があります。通常3月決算の上場会社の配当基準日は3月末、効力発生日は6月の総会後です。そのため、継続保有期間の計算が3か月前倒しとなります。3月決算以外の会社でアクションをとろうとしている場合にはご留意ください。
 
なお、「非支配目的株式等」は、「5%以下」を配当等の支払いに係る「基準日において」有する場合、とありますので、特に保有期間は気にしなくていいですね。
 
 

具体的に継続保有期間はどう考えればいいのか?

改正後の適用を考える場合には、以下2点を検討してください。
  1. 配当等を受ける側が、配当等を受けるとき新法適用をしているのか?
  2. 配当等を出す側の配当等の基準日はいつなのか?
 
たとえば、下記のケース。
  • 配当等を受ける側:12月決算のA社
  • A社が上場会社B社の発行済株式総数の30%を5年ほど前に取得し、継続保有している。
  • A社が平成28年2月末にTOBでB社発行済株式総数の21%追加取得し、発行済株式総数の51%を保有することとなった。
  • B社は下記配当を行うこととなった。
  • B社配当の基準日:平成28年3月31日(3月決算)
  • B社配当の効力発生日:平成28年6月27日
 
01.配当等を受ける側が、配当等を受けるとき新法適用をしているのか?
A社の新法適用は平成28年1月1日~同年12月31日の事業年度からとなります。そのため、配当を受ける平成28年3月31日では、A社は新法適用しています。新法適用なので、判定は「1/3超」「基準日」ベースで行うこととなります。
 
02.配当等を出す側の配当等の基準日はいつなのか?
新法適用なので、判定は「基準日」ベースで行います。基準日から起算して6ヶ月前から1/3超を保有しているか?というと、保有していません。1/3超となったのは、平成28年2月で基準日の3月末の約1ヶ月前です。そのため、A社の受取配当は、関連法人株式等からの配当には該当しません。よって、その他の株式等からの配当ということで、50%益金不算入(負債利子控除なし)となります。
 
もし、A社がB社からの配当を関連法人株式等からの配当、つまり、100%益金不算入(負債利子控除後)としたい場合には、平成27年9月末までに買い増しする必要があります。配当の基準日は平成28年3月末となるため、その6か月前は平成27年9月末となるからです。
 

TOBによる買い増しの際は実務スケジュールに注意

上記のように買い増しして益金不算入メリットを最大限享受したい!という場合には、実務スケジュールに注意が必要です。
特に、上場会社株式からの受取配当等について、25%→1/3超に買い増しして、益金不算入のメリットを継続して取りたい場合には、「TOBが必要」となります。(除外要件もありますが、ここでは省略。)TOBは案件開始からクロージングまで、通常、超特急でざっくり2か月程度、普通ペースで3か月程度ですのでそれなりに期間が必要となります。
 
 
と、長くなってきましたので、今回はこれにて。
次回は、法人税法施行令を読んでいて1点よくわからない点があったので、その点について考えたことをご紹介します。(出し惜しみ)
 
 
それでは、また。( -ω- )ノシ
tom
 
 
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