IFRS任意適用がガンガン増えてる 〜IFRSのれん償却とM&Aの関係
こんにちは、tomです。
最近IFRS任意適用会社がガンガン増えてます。日経にはこんな記事が。
IFRS任意適用の理由は、本音と建前があって、本音らしい情報は中々出てこないのですが、M&Aを積極的にしたい会社はまずIFRS適用しますね。なぜなら、IFRSでは、M&Aしてのれんが多額に生じても、のれん償却費が出ないからです。(その一方で減損テストは年1回厳しく行われるようになるという話もあります。)
一方、日本基準ではのれんは20年以内で償却することとなるため、のれんがでかくなればなるほどP/L利益は押し下げられます。
このことから買収したいけど、買収先のP/L利益よりもでかいのれん償却費がでるから買収しない、という意思決定も多々あります。ディールブレイカーってヤツです。日本基準を適用していたら、なるべくのれんを出ないようにする、つまり安く買うしかない。特に、ベンチャーなどは株主資本が薄い場合が多く、ベンチャーをM&AするようなIT業界などではのれんが多額に出るケースが多いため、IFRSが好まれるのかもしれません。また、投資事業がメインとなっている商社なども同様かと思います。
IFRSでのれん償却がもしされるようになったら、M&Aを積極的にしていきたい、もしくはM&Aを積極的に既にしまくっており、のれんが多額にBS計上されている会社にとっては、イタイ。P/L利益には、イタイ。
では、どれくらいイタイのか、実際にM&Aを積極的に行いのれんが多額になっている会社の事例をみてみましょう。
2014年03月 Viber 買収額 9億ドル → のれん 8.2億ドル
2014年10月 Ebates 買収額 10億ドル → のれん 8.9億ドル
のれんは、2件合計でだいたい1700億円くらい(100円/$換算)!!!私にとっては天文学的な数値です、、、
楽天の2014年12月期の連結営業利益が1,064億円(IFRSベース)ですので、のれん償却がもしされるようになったら、この2つの買収だけでも連結営業利益の約15%くらいのれん償却で持っていかれる計算になります。きついne!!!。この買収でのれんを除いて、営業利益が+15%となるようなビジネスでないと、買収によって営業利益がマイナスになるというおそろしい金額です。楽天の営業利益の15%を稼げるビジネスって、そうそうないですよね。
しかしながら、楽天のようにアグレッシブな会社やキャッシュフローベースの投資意思決定の仕組みがしっかりとしている会社ならこんなこと動じもしなさそうです。ただ、バリバリの従来型日本企業でキャッシュフローベースの投資意思決定の仕組みがなく、単にPL利益やROEしか見ていないような会社では、買収を意思決定する際に、「うーん、こののれん償却の負担はきついな。やっぱりやめとくか。」といって、適切な投資意思決定ができなくなるケースもあるかもしれません。
まあ、P/L利益ベースの話でしょ?株価とかにあまり関係ないんじゃないの?と思うかもしれませんが、、、
なんと、、、
「IFRSを任意適用する」とプレスリリースを出した会社はその直後の株価パフォーマンスがいいです(tom調べ)。
数%ではありますが、日本基準適用会社および米国会計基準適用会社の時価総額上位100社の株価(加重平均)やTOPIXパフォーマンス、とくらべても高いです。また、決算発表と同時に行っており、決算発表による株価パフォーマンスの動きがまじってしまうため、決算発表とIFRS適用の公表を同時にしている会社を除いてもです。
もしかしたら、IFRS適用の公表によってM&Aによる成長期待が株価に上乗せされたのでしょうか。ある意味、会計基準や会計処理によって、株価がゆがんでいる(のかもしれない)一つの事例ともいえるでしょう。もしくは、会計基準を表明することで、会社の方向性を暗に示したために株価が新たな情報を織り込んだといえるのかもしれませんね。
これからもIFRSをめぐる企業の動向には要注目です。
<本日のまとめ>
それでは、また。( -ω- )ノシ
tom