会計士のデザインノート

ヒトとカネの交差点

社外取締役の報酬感 ~なにそれ、おいしいの?

 

 

こんにちわ、tomです。

 

今朝の日経にこんな記事がでておりました。

 

s.nikkei.com

 

社外取締役の稼ぎはどの程度か?

 

 

記事のグラフにある各報酬額範囲の平均値の加重平均を計算してみたところ、832.5万円/年となりました。(たとえば、500~700万は600万円として計算。また、1500万円以上は1500万円として計算)

 

そして、記事にあるように、平均業務時間は月15時間程度。月に約1.5日~2日です。

 

いい報酬ですね、と思った方。

 

はい、私は思いました。

よく考えてみる。自分が東証1部上場会社の社外取締役になったとする。何をすればいいのか?何が求められているのか?昨今、社外役員の設置やコーポレートガバナンスコードやら騒がれているので、自分なりにまとめてみました。

 

 

社外取締役とは。その役割責任

社外取締役とは、株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがない者をいいます。

 

ではその役割とはなんでしょうか?

 

会社法では、取締役会設置会社であれば、業務執行はしませんが、取締役会に出席し、代表取締役・業務執行取締役の業務執行を監督しなければならないこととされています。株主からの委任をうけて経営を行うわけで、社外なので、社内の役員を監督するという、監査まではいかないけど、監督という難しい立ち位置。

 

上場会社でいえば、通常、定例の取締役会は月1回、これを月に2日だけを使って監督する。どこまで行ったらいいか、難しいジャッジメントですね。もちろんデキるビジネスマンならこんなことたやすいのかもしれません。ですが、私のようなヒヨコちゃんでは、びびります。2日で何がわかるんや、、、そんなのほぼノールックやないか、、、ピンポイントでリスクをおさえにいかないと、、、リスク満載!!!(爆)という感じになるでしょう。

 

そう、リスクを負うのです。

 

何か事が起こったら、それこそ訴えられかねない、取締役の責任(任務懈怠、善管注意義務違反、利益相反など)の追及をされかねない、資本市場から消されかねない、、、こわいね!とはいえ、リスクに見合ったリターンを考えると、この報酬額が低いのか高いのか、、その人次第。オファーがあったら(いまは全然オファーの気配すらないけど)このリスクについて真剣に考えねばなりません。

 

また、そのリスクを軽減対応できるだけのスキル等、つまり、裏を返せば会社に対する義務を行使できる、価値を提供できるスキル等が必要となります。義務を履行していれば訴えられても「おれはやったぜ!」と主張しきれれば最終的には問題ないわけです(社会的に消されるかもしれませんが)。ですので、しっかりと会社が求めている業務内容と自分が提供できるスキルとが合致していることを確認する必要がありますね。

 

 

最近の会社法などの動向

会社法等の改正により、監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)のうち、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において、社外取締役が存しない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容とすることとされました。また、社外取締役等の要件も厳格化されています。(詳しくはKPMGさんの記事がよくまとまっていますので、こちらをご参照ください)

 

 

粗くいってしまえば、「上場会社は、社外取締役をおけ。置けないんだったら相当の理由を事業報告で開示しなさい」ということです。「コンプライorエクスプレイン」ルールといわれています。応えるか説明するかということですね。

 

なぜ求められるのかというと、一言でいえば「監督機能の強化」でしょう。いままでは、親会社等の役員で固めていたりして、実効性がなかったといわれています。言い方が悪いかもしれませんが、親会社等で出世できなかった人用のポストという面もあったのでしょう。つまり、腰掛や能力に乏しい人がもしかしたら社外取締役という席に座っているだけというケースが多々あったのかもしれません。(実態をこの目で確かめてはいないのであくまでも想像です)

 

この「監督機能の強化」という趣旨から考えると、社外取締役に求められる業務の内容や質はより高度なものが求められることとなるのではないでしょうか。ただ席にいればいい、取締役会に出席すればいい、というのではなく、株主の立場や会社の成長のためにしっかりと監督をしなければならないということです。要求水準があがるのです。日経記事では、業務時間が前年10時間→15時間と1.5倍になっていると報じていますが、これを反映したものなのかもしれませんね。

 

とはいえ、取締役の選任は実質的に社内の取締役に握られていることもあり、監督機能が働かないのではないか、という問題提起もされています。社外取締役の選任解任権は最終的には株主しか持っていませんが、その議案、つまり次の社外取締役候補を出すのは取締役会だからです。もちろん株主提案がありますので、すべてが、という話ではありませんが。

 

自分はやってみたい。もちろん要求水準はあがっていくだろう。

いままでの議論をまとめてみると、リターンはそこそこありそうだけど、どんどん要求水準があがり、それに伴うリスクもあがりそうだということ。

 

  • 報酬は、平均で832.5万円/年。月に2日程度で。リターンはぱっとみいいなという感じ。
  • 役割は経営執行の監督である。監督を十分に果たせるかはリスクがある。
  • 制度改正でよりいっそう監督機能の要求水準はあがり、どこに地雷があるのやら=リスクはあがる。

 

それでも、やっぱり会計士とか弁護士のキャリアの選択肢としてはあってもいいと思います。過去記事でもあるように、日本公認会計士協会があっせんサービスを開始するようです。業界をあげての取り組み。

 

tom-notebook.hatenablog.com

 

実際、自分はやってみたいと思っています。ただ、やはり条件はあって、「その会社を支援したいか」「好きで仕方がないか」ということは重要かもしれません。しかしながら、そんな想いがあればあるほど、監督機能を果たすことは客観的には厳しくなるのですよ、、、、なに、このジレンマ、、、、

 

 

それでは、また。( -ω- )ノシ

tom