会計士のデザインノート

ヒトとカネの交差点

「休暇を多くとる人の方が生産性が高い」のは当然? ~指標の使い方と行動

 

おはようございます。

 
ただいま朝4:15 。
台風一過ですごく静かな朝です。 

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さて、今回は、こんな記事がFBで流れてきたので、考えをまとめてみます。
 

tabi-labo.com

 
記事曰く「休みが多い人は生産性が高い」ということ。
後半部は国の経済効果の話に飛んでいますが、今回はこの「生産性」という「指標」について考えてみます。「指標をみるときのちょっとした注意」です。注意することで、行動も変わってくるという話。
 
  • 生産性(効率性)だけでなく、総生産量(利益の絶対額など)もみよう
  • 休暇をとるかどうかは、効率性を重視するか、総量を重視するかで変わる
 
 

休みが多いから生産性が高いのか、生産性が高いから休みが多いのか

 まっさきに思い浮かんだのは、この鶏と卵の問題。往々にして、因果関係ではなく、相関関係、というのはよくあることです。
 
 

テイラー「科学的管理法」の時代から変わってない

とはいえ、因果関係を証明した人が過去にもいました。そう、かの有名なF.W.テイラー様でございます。彼の研究著書「科学的管理法」では1時間の作業で、休みを多く取る人(半分くらい)と休まず働き続ける人の話がでてきます(うろ覚え)。すると、休みを半分くらい取る人のほうが2倍ほど休まず働き続ける人よりも生産量が多かったという話があります(うろ覚え)。テイラーの時代は単純な作業だったと思いますし、経済環境、社会環境が異なるので、「まったく変わっていない」という気はありませんが、延長線上にあるとはいえるでしょう。

 
 

生産性とはなにか、休みが多いと生産性があがるのは当然

会計指標として生産性をみれば、生産性=成果(売上や利益などのアウトプット)÷投下資本(労働時間、投下資本などのインプット)となります。
 
この記事テーマにあわせれば、生産性=成果÷労働時間となるかと思います。(記事では成果のない用が明確にされていません)成果は組織の目標や組織内のポジションや機能によってことなるため、詳しくは割愛。
 
生産性の数式に条件をあてはめていきましょう。
 
休みが多いということは、労働時間が少ないということです。よって、分母の労働時間が小さくなる。成果が一定であれば、当然、生産性=成果÷労働時間は上昇することとなります。当然です。
 
ん?この記事では、この当然のことを当然に主張しているだけであって、生産性の数式を説明しているだけにすぎないってことでしょうか?(そんな記事にまじめに(しかもドヤ顔で)こんな文章書いてる私はいったい)
 
 

生産性だけでなく、「成果の総量」の増加も考えろ

生産性が高いのがいい、という話の前提には、
 
  • 成果を今以上にあげることに制約がある
 
という前提があります。いいかえれば、働きまくってもこれ以上成果はでないよ。っていう前提です。
 
たとえば、1時間に10個のものを作れるとしましょう。これを売りたい、売上個数が成果となります。しかし不人気な製品なので、1日に10個しか売れません。つまり、成果である売上を増やすためにどんなに時間をかけても、成果はあがらない。成果を今以上にあげることに制約がある状態。この場合に、10個売れて、1時間労働してということであれば、生産性は成果10個÷労働時間1h=10個/hとなります。
 
では、制約があるのにもかかわらず、2時間働いてしまうとどうなるでしょうか?生産性は成果10個÷労働時間2h=5個/hとなってしまい下がってしまいますね。
 
ではでは、制約を外してみるとどうでしょうか?1日に無限に売れる場合、どれだけ働けば生産性=成果÷労働時間が最大になると思いますか?(なお、売るのに時間はかからないものとします)
 
 
答えは、どれだけ働いても、生産性は最大の10個/hになります。作った分がすべて売れるためです。ためしに計算してみると、、、
 
  • 1時間働く→10個作れる→10個売れる→生産性は10個/1h=10個/h
  • 2時間働く→20個作れる→20個売れる→生産性は20個/2h=10個/h
  • ・・・(以下略)
 
このように制約がない場合には、
 
  • 生産性で比較しても意味ない(意味がわからない)
 
のです。制約がない場合には、生産性で比較するのではなく、
 
  • 「成果の総量」で比較するとよい
 
でしょう。上記の例ですと、「成果の総量」は売れた個数となり、これが最も高いのは、最も長く働く労働時間=24時間のときとなります。つまり働けば働くほど成果が上がる状態ということです。
 
生産性でみてしまうのは、制約があるから。制約がなければ、総量でみる。
 
こういう指標をみるときは、複数の指標をみるのが基本中の基本です。会計でいえば、利益率と利益額をみるようなものです。どちらも大事ですよね。
 
 

で、「休みを多くとる」べきなのか?

休みたかったら休んでください。笑。法定の範囲内では、それが労働者の権利です。
というのが私の意見です。なぜかというと、
 
  • 生産性を上げることを重視するのか、総成果量を上げることを重視するのかは、所属する組織や個人の判断基準によって異なる
 
 からです。組織としては、究極的にはどっちもあげたいんですね。生産性も、成果量も。最高の生産性で、最大の成果量を望むわけです。働けば働くほど利益がでるのであれば、そして給料が一定であれば、会社としてはコスト一定で利益がどんどんでてくるわけですから、利益だけみれば「死ぬまで働け!」といいたいところです。しかし、会社の倫理感とか法律によって労働者の権利は守られており、 「法定内ぎりぎりでやってくれよ」「まあばれなきゃ法定やぶってもいいよ、てか、やぶれよ(ブラック企業のケース)」というふうになるわけです。また、会社や組織には戦略や計画があり、これらによって、昔は生産性重視、いまは総量重視、というふうにウェイトは変わってくると思います。
 
では、個人としてはどうでしょうか。
個人も同様で、世界を変えたいとかでかい成果を出したいなら総量重視でぶっ倒れるくらい働けばいいと思います。総成果量=生産性×労働時間、ですから、生産性がゼロになる限界まで働いたらいいんじゃないでしょうか。ゼロになるまでいくと、やばいですのでご注意ください。他方でまあそこそこバランスとりたいかなと思えば、生産性重視でよい。
 
私はというと、色んなことに時間をつかい色んなことに首をつっこんでいますので、会社に対しては「生産性」重視で行くという方針をとっています。1日x時間しか会社で働かないという「時間」という制約を自分でひいてしまっているため、生産性を重視しているということになります。
 
 
このように、指標の意味(定義)や使い方をわかっていないと、軽々と「よし、休みとればいいのか!」となってしまいがちです。そうではなく、
 
  • 指標の定義を見極め、他の指標と比較する(指標の使い方)
  • 指標を総合的にみて、どれを重視するかで行動を変えていく(行動)
ことが大切です。
 
 
 
ということで、今日も生産性高めに突っ走っていきましょう。
 
 
それでは、今日も一日面白く。
( -ω- )b