会計士のデザインノート

ヒトとカネの交差点

平成27年度税制改正 受取配当等の益金不算入の改正政令② ~継続保有期間は発行会社からの取得の場合どうなるのか

 
こんにちわ、tomです。
 
前回は平成27年度税制改正のうち、受取配当等の益金不算入制度に係る政令についてご紹介しました↓

tom-notebook.hatenablog.com

 今回は、改正法人税法施行令を読んでいて、すんなり読めなかった部分について紹介します。前回未読の方は、前回からお読みいただくことを推奨します。細かい議論です、、、(今回の議論について解釈はこうだよ、というのをご存知な方がいらっしゃればぜひコメント等戴けますと幸いです。

 
一点よくわからないところが、、、発行会社から取得した株式等に係る受取配当等って、、、
 
よくよく改正施行令を読んでいたら、こんな文言がありました。
 
改正法人税法施行令22の3②三
三 その支払を受ける配当等の額がその配当等の額の元本である株式等を発行した他の内国法人からその支払に係る基準日以前六月以内に取得したその元本である株式等につきその取得の日以後最初に支払われる配当等の額である場合 当該取得の日
 
この条文によれば、注意しなければならないのは、配当基準日以前6か月以内に、その発行法人から配当等の元本となる株式等を取得していた場合の取り扱いです。たとえば、A株から配当をうけたけど、そのA社配当基準日の3か月前に、A社から増資を受けていた場合など。
 
この場合には、「その取得の日から配当基準日まで継続保有していればいい」という条文です。これって、たとえば、
  • A社株を25%を1年以上保有していて、配当基準日の3か月前にA社から増資をうけて、33%超になった場合、関連法人株式等に該当するのでしょうか?
  • もしくは、もともと0%だったけど、配当基準日の3か月前にA社から増資をうけて、33%超になった場合、関連法人株式等に該当するのでしょうか?
 
これは、完全子法人株式等からの受取配当等の規定をそのままコピペでもってきています。完全子法人株式等については、その配当等の全額が益金不算入、つまり非課税となりますが、その株式等の計算期間中は継続してその株式等を全部保有していなければなりません(配当が年に1回なら、1年継続保有となります)。
ここで、計算期間中に増資して、親会社が全て引き受けて新たに株式等を取得する場合、新たに追加した株式等については、計算期間中継続して保有していません。そのため、親会社は保有する子法人株式等の全部を計算期間中継続して保有していないこととなります(期中増資で取得した分は1年間保有していません)。これだと、条文上は、100%の持株比率は継続しているにもかかわらず、完全子法人株式等にならず100%益金不算入とならないというおかしな状況になります。それをカバーするのが、上記条文のような定めです。つまり、期中に増資等で取得した分については、「取得の日」から基準日まで保有していればよい(1年間継続保有ではなくてよい)という定めです。この定めをおけば、おかしな状況は防げます。
 
という趣旨からすると、今回の「関連法人株式等」についてもおかしな状況を防止したい趣旨なのではないかという推測ができます。
ところが、条文の解釈によっては、たとえば0%→1/3超となるような増資を引き受けてから6カ月以内に受ける配当等については、関連法人株式等になるということも考えられなくはないかと思います。これは「完全子法人株式等」の制度趣旨では想定していない状況です。むしろこれは交渉次第で狙っていけるんではないかと。
 
 
というふうに、この「関連法人株式等」の新たな規定(法人税法施行令22の3②三)は、どういう趣旨なのか?どういう場面を想定しておいたものなのか?というのが気になるところなのです。
 
この点、どういう取り扱いになるのかは今後、各専門誌等々取り上げられるかと思いますので、追ってお伝えできればと思います。
 
 
<まとめ(前回も含め)>
  • 受取配当等の益金不算入の持株判定は、効力発生日以前6カ月継続保有→基準日以前6カ月継続保有に改正された。
  • 通常の買収案件では実務スケジュールに留意が必要となる(ex.TOB
  • 発行会社からの増資等による取得により持株比率が上昇した場合の取り扱いは解釈の余地があると考えられるため、各専門誌の情報に期待。
 
 
 
それでは、また。
tom