会計士のデザインノート

ヒトとカネの交差点

会計士は過剰?不足?(1/2) 〜監査市場編

 
こんにちは、tomです。
 
今回は、このテーマについて考えてみました。
 
会計士は過剰なのか?会計士は不足しているのか?
 
 
私の結論はこうです。
    市場規模と公認会計士の数の成長率からみれば、公認会計士は過剰気味である。
 
考えるきっかけとなったのは、FBで流れてきた下記の記事2つ。
 
 
この2つの記事はメッセージが全く逆にみえて、考えてみると大変面白いです。
 まずは記事の内容をみてみましょう。
 
まとめると、
  • 公認会計士協会が社外役員候補として、公認会計士の人材紹介・マッチングを開始する。
  • 本記事著者によると「今回の新制度は、なり手不足に悩む企業側の問題よりは、むしろ会計士業界の収入確保策の側面が強いように感じる。」
  • 食えない会計士が、ダメ監査法人をつくり社会悪となっている。
  • 今回のマッチングは食えない会計士の救済、「裏を返せば会計士業界の人余りが近年ますます深刻化して」いるのではないか。
つまり、「会計士は人余り(過剰)である」とする記事。 
 
つまり、「会計士は人材不足である」とする記事。
 
 
どちらが正しいのでしょうか?
 
大手監査法人にいる身としては、「人材不足」で慌てている様をみているので、実感がわきますが、かるーくネットでデータを集めた結果をもとに考えてみましょう。
 
 
まず、過剰か不足か、について考えてみました。「需要に対して供給が過剰か、不足か」という相対的な比較で過剰か不足かが決まると思います。
また、需要=顕在需要+潜在需要ですが、今回は顕在需要のみで、需要を考えてみます。潜在需要はまたの機会に。
 
では、需要をサービス(ファンクション)の違いで分類してみましょう。
 
1.監査市場
2.監査以外の市場
 
となるでしょうか。
こう分類してみると、1.監査市場については日経の記事2.が、2.監査以外の市場については記事1.があてはまりそうです。
では、市場での需要=市場規模と供給を考えてみましょう。簡単にネットで調べられる範囲でファクトを集めてみました。
 
市場規模と市場参加者数の関係を図にまとめてみました。
 

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図には、会計士の監査市場とそれ以外の市場規模の推計を表しています。
(推計方法は15分くらいで考えたざっくりロジックとさらっとネットで集めた資料だけなので、数値はぶれるかもしれません。)
右肩の矢印は今後の市場規模の成長予想です。
 
 
今回は一番左の「監査」市場について考えていきます。
 
 
1.監査市場
 
まず需要面。
法定監査は独占業務であるため、需要は安定的なようです。
  • 上場会社数は約3,400社で安定(東証HPより)。
  • 2012、2013年度は監査報酬合計が2,110億円→2,150億円で微増。
  • 過去5年も安定的に増加(監査人・監査報酬問題研究会「監査報酬の実態調査結果について」(以下、「実態調査」と記載。)より)。
  • なお非上場会社の監査報酬は含まれていない。

 

次に供給面。

新規労働者数(供給)は激減していると記事にはありましたが、全体としては伸びている模様。
  • 2000年〜2010年の10年間で11,136名増加(年平均1,113名の増加)
  • 2010年〜2014年の4年間で6,185名増加(年平均1,546名の増加)
ただし、これは監査以外をする会計士も含まれてます。どれくらいの会計位が監査をメインにやってるのでしょうか?
さくっとデータはでてこなかったのですが、おそらく監査をメインにやる会計士も当然増えており、増加率は全体の増加率とほぼ同じくらいと推測されます。(監査をやらない会計士の増加割合のほうが著しく多くなるってことは考えにくいです)
 
 
  • 需要: 市場規模は、安定的に推移している
  • 供給: 公認会計士の人数は増加している
まとめるとこんな感じ。需要の増加率<供給の増加率となっています。
二つのデータから公認会計士(補を含む。)一人あたりの監査報酬をだしてみると、減少していますね、、、苦笑
  • 2010年の監査報酬合計約1,800億円(実態調査より)÷27,792名≒6.47百万円
  • 2014年の監査報酬合計 約2,150億円÷33,977名≒6.32百万円
と約2.5%減です。微妙!
一人あたりのパイは確実に減ってきているようです。
(監査報酬や公認会計士のランクごとに階層化してないので、ざっくりみています。)
 
つまり
監査市場は供給過剰である
という結論が上記のファクトからはなんとなくよみとれます。
 では「人材不足」といっている日経さんはウソをいっているのか?
 
というとそうではないです。
 
「新合格者=新たにキャリアをスタートする会計士の数<監査法人の採用予定数」
を伝えているだけです。「新」もしくは「若手」の、会計士が不足しているのであって、監査市場全体としては過剰気味なのかもしれません。
ここを階層化して分析してみると大変興味深いと思います。(またの機会に)
 
ということで、長くなってきたので、、、
後半に続く!
 
<今回のまとめ>
  • 会計士は過剰なのか?会計士は不足しているのか?
  • 監査市場では、市場規模と公認会計士の数の成長率からみれば、公認会計士は過剰気味である
  • 監査以外の市場は次回乞うご期待
 
それでは、また ( -ω- )ノシ
tom