会計士のデザインノート

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不要な資産は早急に処分すべき? ~平成27年度税制改正の影響-1

 

こんにちは、tomです
 
今回はカタめの話。
(カテゴリの【カタ】とか【やわ】とかは、より専門的な堅い話【カタ】かより一般向けな柔らかい話【やわ】かで分類しています。)
 
気が付けば、先週の2月17日に平成27年度税制改正の法案が閣議決定されていました。なお、正式な国会成立は3月を予定してますので、下記内容には変更の可能性があります。
 
ですので、今回は、「税制改正でどんな影響がでるのか?」という話です。
法人関連にフォーカスして、会社経営などへの影響を考えてみましょう。
 
 
今回考えをまとめておきたいのは
事業上、不要な資産や事業を、改正前に処分したほうが税制上はお得なケースがある」
という点です。特に 
・欠損金が多額にある会社は、繰越欠損金の影響が大きいため、不要な資産の売却を早急に検討すべき(中小法人は除く)
・中小法人や欠損金が(多額に)ない会社は、不要な資産の売却シナリオの準備(税率引下げの影響シミュレーション)をしておくべき
だと考えます。
 
(もちろん、税務上の損益である課税所得や繰越欠損金の水準によっては、そうではない場合もあるのでご留意ください。実行にあたっては必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。
 
 
 
具体的にその理由を説明していきましょう。
 
関連する税制改正内容としては、大きく以下の2点です。
1.法人実効税率の引き下げ
2.欠損金の繰越控除限度額の縮減
それぞれ簡単に内容を説明しておきましょう。
知っている人は飛ばしてください。
 
税制改正の内容>
1.法人実効税率の引き下げ
平成26年度  35.64%(以下、東京都ベース。)
平成27年度~ 33.10%
平成29年度~ 32.34%
ざっくりいって、税務上の利益(課税所得)にこの法人実効税率をかけたものが、法人(会社)の負担する税金となります。
そのため、実効税率の引き下げだけをみれば、減税効果があります。
(ただし、利益に変動しない税金もありますが、ここでは無視します。たとえば、外形標準課税、車両、固定資産税など)
 
2.欠損金の繰越控除限度額の縮減
欠損金の繰越控除とはなにかというと、過去の税務上の赤字(欠損金)をそれ以降繰越して、将来の利益(課税所得)から費用のように控除して課税所得を減額することができるという制度です。その控除できる限度額が、現行では課税所得の80%と決まっています。その%が引き下げられます。
~平成26年度 課税所得の80%
平成27年度~     同65%
平成29年度~     同50%
たとえば、過去に100の欠損があり、当期100の課税所得が出た場合、現行では100の80%=80が控除でき、当期100-80=20にだけ課税されます。改正後は、控除できるのが100の65%,50%となるため、35、50に課税されることとなります。
これは過去欠損が多額に発生し、ようやく業績が回復してきたような会社にとっては実質増税となります。
(ただし、中小法人は除く。中小法人は100%控除可能です)
 
 
経営判断への影響>
次に経営判断への影響を考えてみます。
資産や事業を売却したいなあ、なんて思っているときこれら改正の影響は大きく表れてきます。
改正後に売却する場合には、改正前よりも税金が大きくなるケースもあるからです。
(もちろん、税金だけを考えて資産や事業を売却するわけではなく、しっかりと事業面を見極めることが必要なのはいうまでもないです)
 
「いつ資産や事業を売却するのが税制上お得か?」を以下のマトリックスにまとめてみます。
 
 ざっくりと A.資産等に含み益  B.資産等に含み損
1.欠損金がない
1-A.
改正後
1-B.
改正前
2.欠損金が多額にある
2-A.
改正前
2-B.
場合による
(当期以降、課税所得が生じているケースを想定しています。また、欠損金がある場合には課税所得を大幅に上回る多額の欠損金があるものを想定しています)
 
ざっくりとですが、上記のようになります。
 
もちろん、課税所得・含み損益・欠損金の金額によっては、結論が異なることがある点や消費税等にも影響がある点に留意です。
 
1.欠損金が(多額に)ない場合、税率が低い改正後に益出しし(1-A)、税率が高い改正前に損出し(1-B)することが、税制上はお得です。
2.欠損金が多額にある場合、欠損金が多く使える改正前に益出し(2-A)するのが税制上はお得です。なお、欠損金が多額にあり、含み損が出てしまうケースでは、それぞれの金額の大きさと繰越期間との関係から場合によります(2-B)。(よって省略)
 
 
<今回のまとめ>
税制改正によって、不要な資産や事業を早急に処分したほうが税制上はお得なケースがある。
・欠損金が多額にある会社(中小法人は除く)は、繰越欠損金の影響が大きいため、不要な資産の売却を早急に検討すべき(特に3月決算ではない会社)
・中小法人や欠損金が(多額に)ない会社は、不要な資産の売却シナリオの準備(税率引下げの影響シミュレーション)をしておく
 
 ざっくりと A.資産等に含み益  B.資産等に含み損
1.欠損金がない
1-A.
改正後
1-B.
改正前
2.欠損金が多額にある
2-A.
改正前
2-B.
場合による
 
繰り返しますが、課税所得・含み損益・欠損金の金額によっては、結論が異なることがある点や消費税等にも影響がある点に留意が必要です。実行にあたっては必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。
 
マトリックスをみていると、不良資産やノンコア事業資産の売却を進めるような改正とも思えてきます。安倍政権の「稼ぐ力」をつけるってやつですね。最近話題の「ROE経営」などもまさに資産を少なく、利益を大きくというわけですから、トレンドには乗っているかのように思えます。
しかしながら、改正前に不良資産やノンコア事業資産の売却ができなかったらどうなるのでしょうか。特に中途半端な規模で欠損金が多額にあるような会社では、損したなあ、ですめばいいですけどね。
とにかく後悔しないように、検討を進めておくことは悪いことではありません。
 
 
 それでは、また。( -ω- )ノシ
tom