会計士のデザインノート

ヒトとカネの交差点

税制が変わるだけで利益ガタ落ち!? 〜税制改正の影響.2

 

こんにちは、tomです

 
前回は、税制改正「税率の引き下げ」と「欠損金の繰越控除の縮減」によって、
  • 事業や資産の売却で生じる税金がお得になる!
  • 売却時期を検討しろ!
ということで、どちらかというと「実際に税金が出ていくことで資金に直接影響する」という話でした。
 
今回は、

事業や資産の売却をしなくても、「税制改正がおこるだけで、会計上の利益が減少する」

 

という話。
 
 
なぜ、お金がでていってないのにに利益がさがるのか?その理由は、貸借対照表(BS)に計上されている「繰延税金資産」にあります。
 
繰延税金資産という資産が減少し、同額が費用(のようなもの=法人税等調整額)に変わることで利益が減少します。
 
、、、 
なんじゃ、それ?
 
 
繰延税金資産」とはざっくりいって、、、
「将来減額できる税金」を資産として計上したものです。
 
 
例えば、前回の繰越欠損金がわかりやすいでしょうか。
過去の税務上の損失を、将来生じる税務上の利益(課税所得)から控除する、結果、課税対象が減額され税金も減るというものでした。(具体例は前回にゆずります)
このように繰越欠損金は、いまもっていれば将来税金を減額する効果があります。しかしながら、会計上は何ら表現されません。
 
会計=税務と考える方はたくさんいますが、実は全然違います。「会計と税務は目的が異なるため、処理が異なる」のです。(詳しくは機会があればまた後日~)
 
話を戻すと、将来税金を減額する効果がある、つまり将来回収できるお金が会計上は何ら表現されませんでした、大昔は。
 
それは変だろう、ということで、「繰延税金資産」として、将来税金を減額する効果を資産に計上することになったのですね。
 
 
話が長くなりましたが、
改正1.「将来の税率が下がる」→当然将来回収できる税額が減少します。将来の税金は将来の税率を使って計算されますよね。
改正2.「欠損金の繰越控除額が縮減される」→前回のとおり将来の税額減少幅が減少します。こちらは場合によりけりです。
 
よって、いずれも「繰延税金資産の減少→費用(のようなもの)計上→利益マイナス!!!」ということになります。
 
(改正2の影響について補足:いわゆる回収可能性判断における分類3、4の会社のみ影響がありますが、その中でも繰越欠損金に評価性引当があまりたっていない会社というレアなケースになりそうです。全上場会社をスクリーニングしてみてみましたが、ほとんどの会社が全額評価性引当でふっとんでいましたね)
 
 
ということで、長くなりました。
 
<今回のまとめ>
事業や資産の売却をしなくても、税制改正がおこるだけで、
・「繰延税金資産」が減少し
・同額の費用(のようなもの=法人税等調整額)が計上され
・会計上の利益が減少する
 
 
補足に、、、
 
会計上の利益が減少するのはわかった。それで?
会計上は見た目の利益が減少するけど、EBITDAとかCFは変わらないから、企業価値や株価はかわらないんじゃないの?
 
と思われる方。
 
 
理論的にはその通りです。しかしながら、業種にもよりますが、株価は比較的EPS(1株当たり純利益)の水準で動いたりします。PERをみたりして。ということは、会計上の純利益が動けば、株価も動くことになります。
(残念ながら、税制改正大綱がリリースされた後の株価パフォーマンスの分析をしていないのでどれだけの効果があるのかは定量的には確認できていません。他の要因を排除するのも難しいというのもありますし。)
 
投資家からみれば上記を気にするのはもちろん、企業側からすれば、影響をなるべく小さくしたいというのがあるかとおもいます。この点は前回のエントリに記載した資産等の売却で回避・軽減していくしかないのでしょうか、、、?
 
(なお、上記に関する実際の影響は、関与されている会計士等専門家にご相談ください。各社の置かれている状況や前提によっては影響に相違が生じますのでご留意ください。)
 
 
 
 それでは、また。( -ω- )ノシ
tom